No.40 幕末の和算を解いてみる..岩手花巻の算額

日本の数学である和算は西洋の数学が紹介されて以来、その姿を見なくなりました。
なぜでしょうか。この理由を調べることは興味のあることです。
そこで今に伝わる和算、「算額」の問題を解いてみます。そして、
幕末の解き方と今の解き方を比べたいと思います。

岩手花巻市太田 清水寺にある算額(現存岩手の算額より)

wasan1.gif (4584 バイト)
如図之長並之内斜用甲円二個乙円二個容則甲円径一寸五分長四寸平問
答曰平三寸

術曰長置内甲円径引二寸五分得是身メ六歩二分五厘得内甲円径羃引四坪得是平方に開子とす長自メ子以除八寸得内子引余半メ平得
wasan2.gif (5006 バイト)

左の術文で「平」「自」は和算サイト「和算の館」様よりのご指摘で追加しました。[2004.08.21]


解き方を述べると、(現存岩手の算額、術解略説より)
(以下に等号=を使いますが、和算の立場では使わない方が良いのかもしれません。)

長−甲円径=2.5
2.5 * 2.5 = 6.25
6.25−甲円径の2乗 = 4
4の平方根 = 2・・・これを「子」とする
長の2乗÷子 = 4の2乗÷2 = 8
(8−子)÷2 = (8−2)÷2 = 3・・・平

上の解き方はどのような考え方なのでしょうか。
まだ、どのような考え方、あるいは定理で解いているのか分かりません。
ピタゴラスの定理を使っているかのような部分もありますが......
和算の原点ではないかと思われる「塵劫記」にもどらなければならないのでしょうか。
 

左の算額の問題を解くため、上図のように三角形の面積で
考えてみました。

△abe = △abc + △acd + △cde ------------------ (1)
△abe = (2 * M/2)*1/2 = M/2 -------------------- (2)
△abc = (M/2)* 0.75*1/2 =0.75M/4 --------------- (3)
△acd = 0.75M/4   (△abcと△acdは合同) --------- (4)
△cde = [ed]*0.75*1/2 = 0.75*1/2 ----------------(5)
        [ed]=1.25*1.25 - 0.75*0.75= 1

(2)-(5)を (1)に代入すると、
M/2 = 0.75M/2 + 0.75*1/2
M = 0.75M + 0.75                   ∴ M = 3

上の解き方のほかにもありますが、ピタゴラスの定理を使っていることは
同じですので省略します。

→和算の考え方で解けたようです(2000.01.31)。


参考:現存岩手の算額(山村善夫著)
 
算額の例とその解法をもうひとつ紹介します。→下総国高津村(現千葉県八千代市)に残る鈴木半兵衛さんの算額です。
塵劫記の遺題問題などを詳細に解説している「和算への旅」は和算を詳しく知るには格好のページです。


和算の考え方で解いてみました。
wasan3.gif (10788 バイト)現存岩手の算額、術解略説の「6.25−甲円径の2乗 = 4」は、どうみてもピタゴラスの定理を利用しているはずです。
これをヒントにすると、以下のような考え方になると思います。

左図を参照しながら考えます。

(1)長−甲円径=2.5

長(線分gh=4)から甲円の直径を引いた点を f とすると△agfができます。
また、この f から対角線 ahに垂線を引くと△afi ができます。
この二つの三角形 △agf△afiは等しく(合同)なっています。
(afは対角線ですから、甲円の中心を通るため∠gafと∠iafは等しい)

したがって線分 if は 1.5となります。

三角形 △hif でピタゴラスの定理を考えると、

(2)6.25−甲円径の2乗 = 4 であり、

線分hiは 2となります。
次に△ahjでピタゴラスの定理により、以下が得られます。

(2+M)(2+M)=M*M+4*4
--------------(6)
4*4=4+4M
現在では上式の両辺を4で割って 4=1+M  、M=3 となりこれで終わりですが、

和算では、
4の平方根 = 2・・・これを「子」とする。としてまだ術は続いております。

そして、(3)長の2乗÷子 = 4の2乗÷2 = 8  (8−子)÷2 = (8−2)÷2 = 3 と、さらに続きます。
すなわち、
上記(3)式を現代風に式にした、

 ((4*4/2)−2)/2=M --------------------(7)

和算では、この(7)式で最終的な答えを求めております。

(6)式が得られれば、それからは図と離れた、単なる計算の世界だけで答えはでるのですが、和算の場合は違うようです。

左の「図.3つの面積」で、和算家が考えたと思われる解法を見てみたいと思います。

上図の△ahjでピタゴラスの定理を適用したのですが、左図で□ABCDに注目します。

左図で、(子+平)*(子+平)=平*平+長*長(ピタゴラスの定理)となります。
□ABCDから面積(平*平;□AGHF)を引くと、長*長の面積となり、この面積は、□CDEFと□GBFHの和になります。

左図で見るとわかりやすいと思いますが、

長*長=(子*(子+平+平))=(子*(子+2*平))-------(8)

(8)式から「平」を求める手順は、和算家が述べている術
(3)長の2乗÷子 = 4の2乗÷2 = 8  (8−子)÷2 = (8−2)÷2 = 3
そのものになります。


和算では、(6)式から、図形を離れて計算の世界で答えを得るのではなく、あくまで図形の性質(この場合□ABCDの面積の構成)を利用しているように思えます。

(6)式で終わらず、あくまでも筋を通して(?)いるような解法です。


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さて、(6)式の代数計算で答えを出した場合、和算家はなんと言うのでしょうか。

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