考察:玄語図の構造

江戸中期の思想家三浦梅園の主著「玄語」は、他の思想書とは異なった文章構造を持っております。
このページ、「考察:玄語図の構造」は、その特異な文章構造に注目して、玄語を解き明かしていくのが狙いです。

注:引用する玄語は三浦梅園研究家北林達也氏の「玄語訓読」によります。

   玄語の特異性は次のようなものと考えております。
三浦梅園は自然界の森羅万象を
「反観」と名づけた一対の対向する概念を基本として説明します。一つの概念(一般には条理語という漢字を当てます)を二つの対向する概念に分け、この分割を際限なく展開していきます。まるで入れ子構造あるいはフラクタルな構造に似ています。
そして、この分割するための論理、逆に統合するための論理の形(
条理)を明確に定義しております。
あたかも、この条理を説明するため記号として漢字(
条理語)を振り当てているかのようになっております。

  この条理という規則により「玄語」の文章表現が構成されており、加えて条理を明確にするため図(
玄語図)を併用しており、三浦梅園はこの図を重要なものとして位置づけております。図で表すことができる明快な条理により自然界を記述しているのが玄語の特異なところです。

では、三浦梅園の言う
条理は玄語図でどのように表されているのでしょうか。下の玄語図の一般的な構造(Fig.1)で見てみます。

左の図(Fig.1 玄語図の一般的な構造)は玄語図を一般化したもので、ここで用いられている記号は、玄語図のほとんどに共通に現れます。

gengozu.gif (6786 バイト)Fig.1でも分かるように、玄語図は以下の記号により成り立っています。

1.すべての図記号を包含する円(Fig.1では「大円」と表示)
2.文字(条理語)を円周に配置している二重線の円
3.文字と文字を結ぶ細い線
4.文字と文字を結ぶ太い線(Fig.1では「小直」と表示)
5.e,a,cを串刺し、dabを串刺しにしている線(Fig.1では「大直」と表示)
6.文字を囲む小さな円(Fig.1では「小円」と表示)
Fig.1にはありませんが、大円内部の一部を黒く塗りつぶしていることもあります。

三浦梅園はこれらの図記号をある概念に基づき使い分けていたと思われます。では、どのような概念なのか。これを三浦梅園の主著「玄語」から探してみると玄語図にある記号の概念が次のように記述されています。

15534:斯の語の文法なり。図に。直円有り。大小有り。
15535:大円は混成に擬す〉
15536:小直は粲立に擬す
15537:大直は剖析を為す〉
15538:小円は対待を列す》
15539:文に反合有り〉図に表裏有り〉
15540:文に剖対有り》図に雙岐有り》
15541:是れ図の大意。書に合する有る者なり。

大なる円、小なる円、大なる直線、小なる直線はそれぞれ「混成」「対待」「剖析」「粲立」という「条理」の概念・様態を示しており、これらで表現した構造が文と対応していると述べられています。この玄語の記述から、大円、小円、大直、小直は玄語図のどの記号に対応するのか類推できます。


       bakuicon.gif (2136 バイト)