No78 幕府・各藩は黒船をどのくらい買ったのでしょうか。


薩摩藩は幕府と対等の海軍・海運のインフラ整備を達成?


幕末物語No.53「黒船購入ブーム到来、さてどんな黒船を買いますか」で、ペリー来航の危機感がさめやらない時期(嘉永7年=安政1年)の黒船購買事情を紹介しました。当初日本は自前製造に取り組み、それなりに製造しましたが何せ蒸気機関製造は難しかったようで、まずは買うことになったようです。

さて幕府や各藩は結局、どんな黒船を購入したのでしょうか、そしてどの位の費用を賄ったのでしょうか。


幕府・各藩が輸入した艦船数をヒストグラム(棒グラフ)にしてみました。

幕府と薩摩藩が他を圧倒する艦船数です。砲を備えた艦船が目立ちますので幕府海軍と薩摩海軍、その勢力が拮抗しているように見えます(詳細には確認しておりません)。
但し、艦船とくに戦艦の運用・戦闘方法に関しては幕府側が優っている印象です。


次は幕府・各藩が輸入した11年間の艦船代金の総額(単位ドル)です。

ここでも薩摩と幕府は他を圧倒しております。
特に薩摩藩は中央政府(幕府)を上回り、地方自治体(各藩)の中でもダントツなのです。(幕府が薩摩にいやがらせしたのもこのような背景があったのではないでしょうか。topic18「蒸気船購入の薩摩に幕府がいやがらせ?」

艦船購入の例については(Essays55.黒船・武器調達、活躍したか幕末調達本部)もご覧下さい。


さて薩摩藩は上記グラフによると11年間で約150万ドルを艦船購入に充てています、この金額を日本の両に換算すると130.5万両になります。年平均11.8万両です。(英国グラバー商会の回答文(1869年)、100ドルは348分(87両)で換算(神戸大学附属図書館展示資料))
薩摩藩の年貢収納高は314,002石であり、1石が約1両と言われていますので31.4万両に相当するとして、年貢収納高の37.5%を艦船購入に充てていることになります。そして、薩摩藩士全体の知行高(藩士への給料)は14万石(14万両)(日本全国水準の約1/3(topic19「藩士の数は領民への年貢高でほぼ決まり」)です。

薩摩藩では年貢収納高の82%が藩士給料と艦船購入費で
占められていることになります。

その他、藩の費用として大きい者は参勤交代費用、江戸藩邸の維持費用などがあり調査が必要です(ついでに文政頃はご隠居が二人お元気なのです)が、年貢収納高では不足でしょう。密貿易(幕府独占貿易体制の外でおこなう貿易)をやったり、薩摩特産物の販売や琉球貿易等で年貢収納以外の収入が相当大きい可能性があります。


幕末では米の生産額表示(万石表示)は、藩(家)の家格を表し床の間に飾って眺めるようなもので、実態経済力は別に動いており幕府管理体系の眼では見えない、あるいは敢えて見ない状態になっており、時勢の変化を見えにくくしているように思えます。実態万石表示は内高と言われますが内高を正直に公表するでしょうか。



参考として、幕府と各藩が輸入した帆船と蒸気船(木造船・鉄製船)の割合を左側に紹介します。

蒸気機関による推進機構も当時は外車と内車が混在しており、幕末のこの時期は内車(スクリュー蒸気機関)が広まり始めた頃です。
日本が購入した艦船の中で内車の比率が高いようです。ちなみに外車とは船体の両側面に水車がある(車椅子のような)蒸気船初期の構造です。速度が優るのと、側面に邪魔な水車がないことで急速に内車化したと思われます。

内車と外車そして和船の速度比較は「No.36和船がマジに競争した新酒番船と新綿番船」で紹介しています。

参考資料

幕末物語目次へ戻る/2010.5.22/2012.6.9


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